楽しく稼げる仕事として人気が高まっているキャバ嬢ですが、きちんとした優良店ばかりではないのが現実です。
良い店なら、キャストが楽しく働けるようお店側も心を尽くすものですが、そうでない店の場合、キャストの給料をごまかしたり、辞めることを伝えると、「不正退店だから今月の給料はないよ」などとうそぶいたり、といったことも起きがちです。
お金のトラブルが起きると、キャバ嬢の方がどうしても立場が弱くなってしまうので、そのまま泣き寝入り…ということも多々あるようです。
こうした不誠実な輩の逃げ勝ちとなり、真面目に働いていたキャバ嬢が損をしないようにするための対処法についてお伝えします。
「給料未払い」は頻繁に起こる
「働いていた店が突然閉店してしまい、給料も支払われないまま。店長とはその後連絡が取れなくなった」
キャバクラでは、こういう例を非常によく聞きます。働いた分は必ず報酬が支払われなければなりませんが、店長の携帯が解約されていて、連絡を取ることが不可能になってしまうケースが多いようです。
キャバ嬢の皆さんも、新しく働き口を探さなければなりませんので、追求を諦め、お店探しの方へ気持ちを切り換えることがほとんどです。
中には、
「求人の条件と全く違う条件で働かされ、辛くなって退職を申し出た。すると、『不正退店だから今月分は支払わない』と言われた」
「キャバクラで働いていたことが親にバレてしまい、お店を辞めたいと言ったけれども聞いてもらえず、そのまま店に行くのをやめた。給料が振り込まれなかったので連絡したら、『お前のせいで店が回らなくなったから損害賠償として100万円請求する』と言われた。当然給料も支払う気はないとのこと」
といったような、悪質な店長もいます。
「不正退店」と言ったそれらしい言葉を使えば、キャバ嬢が弱気になって諦めるだろう、という読みでしょう。3番目の例も、本当に100万円もの大金を請求するつもりはなく、強い姿勢で行けば、給料の支払いについてうやむやに出来る、くらいの気持ちではないでしょうか。念のため付け加えておくと、例え本気で請求してきたとしても、1円も払う必要はありません。
こうした悪質な店長は、キャバ嬢たちが法律の知識がないだろうと見越して、舐めてかかっているのです。いかにもそれらしい言葉を並べて見せますが、単なるハッタリで、法律の正しい知識を持っている人はほとんどいないと見ていいでしょう。
働いて賃金を得ている労働者は、労働基準法その他様々な法律によって守られています。悪質な店に当たってしまった場合、その知識が強い味方になります。
キャバ嬢として働く場合、自衛の策として、ある程度法律の知識を身に着けておくことをおすすめします。
給料未払いに遭わないために
給料の未払いに遭ってしまったとき、正攻法で闘う手段もありますが、時間もエネルギーもかなり消費することになります。
そんな目に遭わないよう、始めから真っ当な店を探して勤めるのが一番です。
優良店を見きわめる際のポイントを次に挙げておきます。
①店のHPの有無
お店の中には、トラブルを起こしては行政から指導が入って閉店し、またすぐに名前を変えて別の場所で店をオープンする、といったいい加減な商売をしているお店もあります。そうした店は、webサイトにお金をかけたりはしません。
正当な手段で集客をはかる店は、webサイトをきちんと作ります。サイトは、専門のwebデザイナーに発注し、相談しながら作るので、それなりに手間とお金がかかります。
webサイトの有無は、その店がどんな店かを判断するひとつの目安になるでしょう。
②店長・従業員の人柄
お店の質は、店長の人柄が強く影響します。店長がいい人に見え、他の従業員も優しい人が多いなら、多分その店は大丈夫です。
従業員やキャバ嬢同士が仲が悪かったり、ギスギスしている店なら、店長の経営能力に問題があるかもしれません。
③客層
「類は友を呼ぶ」ということわざがありますが、この世界は似た者同士が不思議と集まります。
常連客の質がよくない店は、あまり長く勤めない方がいいでしょう。
④雇用契約時の書類
働くことが決まったときには、「雇用契約書」を交わすのが一般的です。何かトラブルがあったとき、お互いの身を守るからです。きちんとした経営者は、手間を惜しまず、契約書を作ります。
契約書の類がないお店は、注意した方がいいかもしれません。
⑤募集時の条件と同じかどうか
求人に書いてあった条件とあまりにも違う場合は、誠実なお店ではない、と判断出来ます。
体験入店の際、条件に違いがあり過ぎる店は、やめておくことをおすすめします。
⑥源泉徴収・支払い調書をくれるかどうか
ない店の方が多いですが、源泉徴収票を出してくれる店は、税金関係もしっかりやっているということです。優良店である可能性が高いと思っていいでしょう。
⑦給与明細がしっかりしているか
給与明細を貰ったら、しっかりチェックしてみましょう。「厚生費」「雑費」など、よく分からない理由で引かれている金額が多い場合は、店側の経営に問題アリかもしれません。
⑧チェーン店・系列店かどうか
チェーン店だったり、経営母体が大手企業だった場合は、きちんと労働基準法に則って経営している確率が高まります。
ある程度安心していいでしょう。
⑨違法行為を行わない
客引きを平気で行っているような店なら、早めに見切りをつけた方がよいです。
また、ペナルティで罰金を課している店も多いですが、罰金自体が違法行為です。高額の罰金を取るような店も、最初からクリーンな経営をする気がないということなので、さっさと辞めましょう。
⑩掃除が出来ているかどうか
お店が清潔かどうかは、経営者の人柄をかなり正確に表すものです。
特にトイレが綺麗かどうかは、体験入店でしっかりとチェックしましょう。
いざというときを想定して備えておく
何事にも、準備が肝心です。万が一のトラブルに備え、普段から記録を取っておくようにしましょう。
タイムカードがある店は、入と出の時間が打刻された画像を写真として取っておきましょう。
ない場合は、手帳に記入しておくなどの対策が有効です。指名の実績やドリンクなども、念のため記録しておくと、給料がごまかされているのが分かる場合もあります。
店がトラブルを抱えていそうだったり、辞めることを考え始めたような場合には、日払いで貰うというのも一つの手です。
また、交渉のときにやり取りを録音できるようにしておきましょう。実際に言った言葉の記録は、後でかなり威力を発揮する場合があります。
訴訟になった際、お店の口座番号が必要となる場合があります。通帳を見る機会があったら、取引銀行と口座番号を控えておきましょう。
給料未払いに遭ったら
実際に給料未払いに遭ってしまったら、どうすればいいのかを次に挙げます。
①内容証明を送る
「給料を払って下さい」と訴えても取り合ってもらえなかったり、携帯に出なかったりした場合には、まず内容証明を送ります。
いつからいつまでこれくらい働いたのに、貰えるはずの給料~万円が未払いであり、払ってほしいというあなたの要求を書面にしたものです。
書面は3通作成します。相手に送る分と、自分の控えと、郵便局で保管するためのものです。これで、あなたが先方に対してこういう内容を訴えているという証明になります。
内容証明を送っても、無視されれば終わりです。宛先不明で返ってくるケースも多いです。
が、とりあえずあなたが行動を起こしたという証明になります。
②労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、こうしたトラブルで困っている人が相談出来る機関ですが、労基署に相談すればトラブルが解決する、という過度な期待をしてはいけません。
労基署の人はまず「自分で頑張って交渉しましょう」「そういう悪質な店は多いから、指導したり裁判したりは出来るけど、あなたも大変だよ」と、事なかれ主義的なことを言ってくるかもしれません。
ここで、内容証明を既に送ったこと、裁判も辞さないことなどを伝えると、あなたの本気度が伝わります。解決策を真剣に考えてくれるでしょう。
本気度を伝えるためにも、電話相談ではなく、直接足を運びましょう。労基署の人も人間です。電話越しだと、「まあやめておきなさい」的なことを言いやすいですが、実際に困っている人が目の前にいれば、助けてあげたくなるのが人情です。
ちなみに、自分の家ではなく、店が属する地域の労基署に行ってください。
労基署は、お店に対して「給料をきちんと支払うように」という指導をしてくれます。強制力はありませんので、店側が応じなければおしまいですが、お店側にもあなたの本気度は伝わるでしょう。うまくすれば、裁判を起こされるよりは…と支払ってくれるかもしれません。
お店が潰れてしまっている場合には、未払いの賃金を国が立て替えてくれる制度が適用できるかもしれません。ただし、全額ではありませんので、それは覚悟しておかなければなりません。この場合、退職後6か月以内であることが条件なので、お店を辞めた後は早めに行動しましょう。
③少額訴訟を起こす
少額訴訟は、話し合いで解決しないトラブルの相手を法的に訴えるための手段です。お金もあまりかからず、比較的短時間で解決出来ます。
1)請求できる金額は60万円以下である
2)証拠・証人がすぐに用意出来る(タイムカードの写しや勤務時間の記録など)
3)内容が複雑すぎない
訴状を書いて提出した後、3回は通う必要がありますが、審理は1回で判決が下されます。
お店側には、あなたが働いた分の給料を支払う義務がありますので、あなたの訴えはまず通ると見ていいでしょう。
裁判所に支払いを命じられても、店側が素直に応じない場合は、資産の差し押さえが出来ます。この時、店の口座番号が分かれば、口座にあるお金から支払ってもらうことが出来ます。
口座番号が分からない場合には、こちらから指定したものを差し押さえることになります。ソファやテーブルなど、お店側が経営上ないと困るものを差し押さえると効果があるかもしれません。
内容証明の書き方が分からない場合、有料ですが、行政書士などの専門家が相談に乗ってくれます。また、「法テラス」は市民が無料で法律相談出来る組織です。
そうした専門家に協力を頼むのもいいと思います。
キャバ嬢が気をつけておくべき点
キャバ嬢として働く人が注意しておくべき点を挙げておきます。
①お店の経営状況を観察しておく
「ある日出勤したらお店が閉店していた」などという冗談のような話がごろごろしている世界です。お店の経営状況は常に把握しておくようにしましょう。
一度でも給料の未払いや遅れがあれば、その店は危険です。
②店側の言うことを鵜呑みにしない
トラブルになると、「不正退店」だの「損害を受けた」だのと責任転嫁してくる店もたくさんあります。キャバ嬢を甘くみてハッタリをきかせている場合がほとんどなので、鵜呑みにしてはいけません。
ただ、感情的になって暴言を吐いたり、物に当たったりすると、こちらが不利になりかねませんので、あくまで冷静に対処してください。
いざトラブルになったら、相手の主張を記録しておき、正しいのかどうか、ネットで検索するなりして調べましょう。
録音が最も有効な方法です。
③労働に関する知識を得ておく
キャバ嬢に限らず、どんな勤め人でも、トラブルに見舞われることはあるものです。そのときに市民を守ってくれるのが法律です。
いざという時に備え、最低限の知識は勉強しておくことをおすすめします。
なんのための行動かよく考える
給料の未払いが発生したとき、諦めずに闘う方法はあるということをお伝えしてきました。
不幸にも実際、こういう場面に遭遇したときには、行動を起こす前に、もう一度「何を目指して行動するのか?」という動機をよく考えてみましょう。
文中で紹介したケースはいずれも、未払いの給料をすべて支払ってもらえたわけではありません。
キャバクラの賃金システムは非常に複雑なものが多いため、未払いの賃金を国が立て替える場合には、歩合の分は計算されず、基本給の何割かという計算になることが多いようです。未払い分が100万以上あったとしても、支払ってもらえるお金はその何割かに過ぎません。
少額訴訟も、60万円以下のみなので、全額の返還はないものと思っておいてください。
もちろん、資金が潤沢にあるなら、弁護士を雇って本格的に訴訟を起こすことも出来ます。そうでない場合は、勝ち取れたとしても、上に記したどちらかしかありません。
労働基準監督署に行くにも、簡易裁判所裁判所に行くにも、何度も通う必要があり、複雑な書類を何通も作成しなければなりません。
高額ではないにしろ、費用も多少かかります。
それだけの手間をかけて、100万円以下のお金しか得られないなら、諦めて次に行った方がいいや…という考え方も全然アリです。
ただし、悪質な店がつけあがり、同じような被害に遭うキャバ嬢がまた出てくる可能性は高くなります。業界全体の活性化のためにも、悪質な店にはある程度打撃を与えて、健全な店を増やしていく必要があります。
労基署から指導が入ったり、裁判所から連絡があるだけで、向こうは必ずダメージを受けているはずです。行動を起こすことには、相手にとってもかなりの牽制になります。
お店側を許せない、泣き寝入りはイヤだ!という強い気持ちがあるなら、是非制度を利用して相手に出来るだけのダメージを与えてください。
まとめ:備えあれば憂いなし!
トラブルの際役に立つのは、知識と情報と証拠、そして負けない気持ちです。
いざというときに備え、闘えるスキルを身に着けておくのも、夜の世界で生きるキャバ嬢には必要な能力です。
リスク管理もできる有能キャバ嬢としてスキルアップしていってくださいね。