「ホステス」と「キャバ嬢」 「ホステス」とは、夜のお店で接客の仕事をする女性全般を指す言葉です。しかし、近年では、やや高級なクラブで接客する人を「ホステス」と呼び、キャバクラで勤める人は「キャバ嬢」と呼んで、区別されることが多くなりました。 ここでは、銀座などの高級クラブで働く人=ホステスという定義で話を進めましょう。 クラブのホステスもキャバ嬢も、仕事の内容にはあまり違いがありません。が、お店によって、客層や料金に明らかな差があります。 クラブを利用する男性客は、40~50代とやや高めです。また、時間制で、料金体系がはっきりしているキャバクラに比べ、クラブは席料が高く、一晩遊ぶと10万以上は軽く飛んでいくお店もざらです。 若さやフレッシュさが求められがちなキャバ嬢と比べると、ホステスには熟練の接客スキルを求められることが多いようです。その分、ホステスの年齢にはキャバ嬢よりも幅があります。 高級クラブで勤めるホステスには、相応の知性や品性が求められます。見た目も売りの一部なので、自分好みの髪型や服装をすることは出来ません。 クラブのドレスコードに合った外見を保つことが求められます。
銀座のクラブには厳しい髪型コード
日本全国の歓楽街の中でも、トップクラスの高級店が集まる銀座には、独自のルールがあります。
①銀座のホステスは「銀座仕様」
銀座のホステスは、毎日髪型を「銀座仕様」にセットしなければなりません。一目見てホステスと分かるような、華やかなヘアスタイルです。前髪は立て、ドレススタイルならフルセットで盛りめに仕上げます。 銀座仕様は素人では出来ません。毎日美容院で髪をセットしてもらうことになります。 1回につき2000~3000円程度です。和髪だともう少し高い場合もあります。 ヘアセット代は、ホステスの自腹です。毎日となると、ヘアセット代がバカにならないので、節約のためにセルフでヘアメイクをする新人もいるようですが、「銀座仕様」に仕上がっていない場合、一目見ただけでママに「今日は帰りなさい」と言われることも…。 きちんと美容院でセットしてもらったとしても、腕の未熟な美容師が適当にセットしたら、やはりやり直しを命じられます。
②ホステスは髪型が命
このため、銀座のクラブホステスは、髪型に相当気を使います。夕方18時~20時の間は、銀座のサロンはホステス達であふれかえります。人気の美容師は指名が殺到し、ホステス達の間で取り合いになると言われています。 待ち時間が長くなると、出勤時間に間に合わないこともあります。遅刻は罰金などのペナルティが課されることが多いので、時間までにきっちり髪型を仕上げて出られるよう、どのホステスも必死です。
③専属のサロン・美容師を持つ店も
特定のお店と契約していたり、お店に専属の美容師をおいていたりする店もあります。これだと、間違いなく髪をセットしてもらえるので、ホステスにとっては安心です。 しかし、かと言って自宅から手入れのされていない髪のまま出勤するのは、銀座のホステスとしてはNGです。どこで誰が見ているか分からないからです。 お店仕様の盛り髪とはいかないまでも、常連のお客に見られても見苦しくない程度には整えて出勤するべきでしょう。
ホステスの髪型
では、代表的なホステスの髪型をご紹介しましょう。
①ハーフアップ
髪の毛の上半分をアップにし、下半分を下ろすスタイルです。ドレススタイルによく合います。人を選ばず、大抵の女性を可愛く見せてくれるスタイルなので、ホステスにもキャバ嬢にも人気の髪型です。 クラブホステスの場合、アップ部分を高く盛り上げ、下の部分はコテで細かく巻くスタイルにして、一層の華やかさを演出することも多い髪型です。
②巻き髪
上部をアップにせず、全体を下ろすスタイルでも、髪の毛はしっかり巻きます。 根元からしっかり巻き、内巻き・外巻きを交互に使い分けます。ボリュームがないと、全体が貧相な印象になり、ドレスに負けてしまうので、頭頂部は特にしっかりと巻いていきます。 巻き終わったら、全体にスプレーをかけて固めます。
③ポニーテール
ホステスのポニーテールは、頭の高い位置で括り、全体に華やかさをアレンジしていくスタイルです。 縛った部分にくるりと髪の毛を巻きつけ、垂らした部分を巻いたり、下ろした髪の毛に細かく巻きを入れ、ボリュームを出したりと、それぞれ工夫している人が多いようです。
④アップ
アップにした髪の毛をかぶせるスタイルは、ホステスの髪型の中でも一般的です。かぶせをマスターしておくと、様々な応用が利くので便利です。 高い位置にポニーテールを作り、毛束を散らします。その次に前髪にウェーブをかけながら後ろへ流し、全体としてまとまりのある髪型を作ります。 ドレスにも和装にも似合う人気のスタイルです。
⑤シニヨン
髪の毛を後ろでひとつにまとめたお団子スタイルをシニヨンと呼びますが、ホステスのシニヨンスタイルは、毛先をくるりと巻いたり、全体のボリュームを高めに持って、高級感を出すスタイルになります。トップの位置を高くすると、「夜会巻き」と呼ばれる髪型になります。 いずれも、ゴージャスさを演出できるので、高級クラブのホステスにふさわしい髪型と言えるでしょう。
⑥ショートもOK
ショートスタイルがダメということはありません。ショートでも、きちんとヘアメイクすれば、一見ショートとは分からないような華やかな仕上がりになります。 ゴージャスさ、華やかさという点では、ロングにやや劣りますが、ショートの方が似合うという自負があり、接客のスキルも自信アリなら、ショートでもOKでしょう。
セルフでスタイリングする場合の注意点
今は、銀座で働くホステスには、お店専属だけでなく、派遣で色々なお店を渡り歩いている人も存在します。 また、銀座以外のクラブホステスでも、どうしてもセルフのヘアメイクに頼らざるを得ない、という事情がある場合もあるでしょう。 セルフのスタイリングは、プロがやるよりも髪の毛をいためやすいのがネックです。 自分でスタイリングする際、髪の毛をいためすぎないよう注意するポイントをご紹介します。
①ヘアアイロンは正しく使う
自分で盛り髪を作る場合、必須なのがヘアアイロンです。高温で髪の毛の形を自在に作れるヘアアイロンは、便利なツールですが、使い方には気をつけなければなりません。 間違った使い方でヘアをセットすると、髪の毛には大きなダメージを与えることになります。毎日続けば、一目でそれと分かるダメージヘアになってしまう場合もあります。 アイロンを使う前には、髪の毛を完璧に乾かしておかなければなりません。濡れた髪にヘアアイロンを使うと、髪の毛に含まれる水分が膨張して爆発する「水蒸気爆発」が起きます。髪の毛の組織が破壊されてしまい、たんぱく質が炭化する現象です。 髪の毛は死んだ細胞の集まりなので、一度起きた変化は元に戻りません。予防が一番の対策になります。 一か所に当てる時間は、2~3秒が限度です。それ以上高温を当て続けると、やはり髪の毛のたんぱく質が変性してしまいます。 リズミカルに細かく手を動かして、熱を均等に当てるようにしましょう。
②カラーはサロンで
毎日のヘアセットをセルフで行ったとしても、カラーリングはサロンでプロに任せることをお勧めします。 ヘアセットに加え、カラーも自宅で、となると、髪の毛に与えるストレスが非常に大きいものになるからです。 市販のカラー剤は、髪の毛の色を明るくするブリーチ効果を強くするため、薬の種類が一種類しかありません。これは相当強い薬となり、必要以上に髪の毛を傷めるもととなります。 これに比べ、サロンでプロの美容師が使うカラー剤は、ブリーチ効果の強さが何種類もあります。サロンでは、髪のいたみ具合をチェックし、髪の毛に塗っていくときの時間差も考えてカラー剤を使います。洗い流しのタイミングを決めるのにも、プロの知識が必要となります。 髪の毛は、ホステスにとって大事な財産です。先のことを考えるなら、髪の毛へのダメージが最も少なくて済む方法として、サロンを利用した方がいいでしょう。 プロに任せたとしても、カラーリングは基本的に髪の毛をいためる行為です。カラーリングを一度行ったら、次に色を入れるまで、ある程度間隔を空けましょう。
ホステスにはヘアケアも大事!
ホステスは、身体を張って稼ぐ職業です。閉店間際まで頑張って飲んで、家に着く頃は午前様。がちがちに固めたヘアメイクを崩すことなく、ベッドで爆睡…なんていうこともしばしば。 こういうやり方をしていると、当然髪の毛も傷んでしまいます。 忙しくてそこまで手が回らないという人も多い悩みどころですが、やはり、ホステスにとっては髪の毛が大切な財産であることを思えば、ヘアケアにも気を配る必要があります。
①正しいシャンプーを
髪の毛は、実は間違った扱い方をしている人がとても多いのです。 よくあるのが、「髪の毛を傷めない」=アミノ酸系シャンプー、という思い込みです。 肌に優しい、刺激が少ないというのがアミノ酸系シャンプーの売りですが、その分洗浄力は弱いのがデメリットです。汚れの成分を落とし切ることが出来ず、地肌に皮脂やスタイリング剤の成分が残ってしまうこともあり得ます。 ノンシリコンがよいとか、ラウリル硫酸が入ったものは危険とか、様々な情報が飛び交っていますが、実のところ、特定の成分がいいとか悪いとか、一概には言えません。 大切なのは、「その人に合ったシャンプーを使うこと」です。 自分に一番しっくり来る市販のシャンプーを色々と試すのもいいですし、信頼出来る美容師さんに、お勧めを聞いてみてもいいでしょう。 髪の毛を洗うのは、毎日の行為です。日々の積み重ねがダメージを防ぎ、健康な髪を作るのです。
②洗い髪は放置しない
髪の毛の表面は、「キューティクル」と呼ばれる組織で覆われています。 キューティクルは、湿気と熱に弱く、濡れた状態だと開きやすい性質を持っています。 そのため、洗い髪を放置すると、開いたキューティクルから髪の毛の内側の水分がどんどん蒸発してしまいます。髪の毛を洗った後は、しっかりとドライヤーをかけて乾かしましょう。乾かすと、キューティクルは再び閉じて、髪の毛の中の水分を守ります。 キューティクルは、根元から毛先の方向へ重なっているので、その流れに逆らわないよう、髪の毛の根元から先端部分へ向けてドライヤーの熱風をあてることも大切です。温度が上がり過ぎないよう、髪の毛から20cmの距離を保ってドライヤーを使いましょう。
③トリートメントで補修
トリートメントは、髪の毛のダメージを補修して、栄養分を補給するためのヘアケア剤です。定期的に使うことで、髪の毛の健康と艶を保つことが出来ます。 自宅で使うだけでなく、サロンでヘッドスパやトリートメントケアをしてもらうことも、髪の毛の美容のために有効です。 女性の髪の毛は、顔の肌以上に老化の影響が現れやすい部分でもあります。見た目の美しさが売りの一部であるホステスは、顔のお肌と同じように、髪の毛にも手間とお金をかけた方がよいと言えます。
髪型はホステスの「看板」
ホステスが髪型をきっちりと仕上げなければならないのは、髪型がホステスの看板であり、名刺代わりでもあるからです。 第一印象は、その人のイメージを決める重要なポイントです。一度ついたイメージは、なかなか変えることが出来ません。 しかしながら、髪型を整えることは、外見をよくする意味だけがあるのではありません。 その店で必要とされるイメージに合わせ、自らの商品価値を高めようと努力している、そのホステスの「心意気」の表れでもあるのです。 場に合わせた華やかな衣装も同様です。形だけ整えるというのではなく、高い料金を支払ってお店を利用してくれるお客様に、最上のおもてなしを提供しようとするサービス精神が、ホステスの髪型や衣装に現れる、と考えられるのです。 高級店のママであるほど、ホステスの外見に厳しいのは、そのことをよく分かっているからです。 髪型を完璧に整え、お店で一番ゴージャスな衣装を着用したとして、中身が伴わなければ「看板倒れ」になってしまいます。 クラブホステスは、外見に見合うだけ中身も磨いてスキルアップしていくことを目指さなければなりません。
まとめ:自分だけに似合う髪型でNo.1を目指せ!
色々と制約も厳しいホステスの髪型の世界。 しかし、細かい規定やドレスコードを守ることが真の目的ではありません。お客様を楽しませ、自分のファンになってもらって、指名に繋げるためのものです。 自分だけに似合う唯一の髪型を探し出し、完璧なスタイルと、それにふさわしい接客術で、是非お店のNo.1を目指してください。