ここを抑えておこう!生活保護を受けながら水商売をするには

 様々な理由で働いてお金を稼ぐことが出来ない人は、日本全国に何百万人と存在します。そうした人でも、憲法で普通の生活を送れるよう、保証されています。そのための制度が生活保護です。

 生活保護を一度受けると、キャバ嬢やホステスなどの水商売の仕事を始めることは出来ないのでしょうか?

 詳しくご紹介していきます。

生活保護とは


 生きている限り、人は働いてお金を得なければなりません。しかし、思いがけない病気や不慮の事故による怪我など、やむを得ない事情で、どうしても働くことが出来ず、収入の道を断たれてしまう場合があります。

 そうした人でも、生きていけるように便宜を図るのが「生活保護」の制度です。生きていける、生活するということは、必要最低限のお金だけ保証するという意味ではありません。

 日本の憲法は、すべての国民が等しく「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利がある、と規定しています。

 つまり、健康状態を維持し、子供に教育を受けさせ、多少の娯楽で人生を楽しむ権利がある、と法律が保障しているのです。

 困った人に手を差し伸べるためにあるのが、「生活保護」です。

生活保護には厳格な規定がある


 急にリストラされて失業した、持病があって働けない…こういう立場に陥る人は少なくありません。どうしても収入を確保出来ない場合、役所で役所で申請すれば、生活保護の審査を受けることが出来ます。

 しかし、生活保護を受けるには、以下に挙げる条件を満たす必要があります。

①援助してくれる身内がいない

 生活資金に困窮した場合、通常は身内に頼ります。親や兄弟、親戚があれば、援助のあてがあるとみなされ、生活保護の受給には至りません。

 ただし、親と絶縁していたり、兄弟と疎遠で、援助を頼みにくいというケースもあるでしょう。その場合、申請時に役所が親や兄弟に確認を行って、援助出来ない状況であることがはっきり分かれば、受給できることもあります。

 ちなみに、この場合の「身内」とは、扶養義務のある三親等以内の親族を指します。

②資産がない

 預貯金や当座の現金の持ち合わせがないことはもちろん、保険や土地、家、車など、売却すれば現金が得られるものを資産と呼びます。

 これらを所有しておらず、現金を得ることが不可能という世帯が、生活保護受給の対象となります。

③病気・怪我などで働くのが困難

 上記の①と②を満たした上で、病気や怪我などですぐには働くことが出来ない場合、生活保護を受けられます。

 申請後、就労困難な症状かどうかを医師が判断します。

④世帯収入が最低生活費を下回っている

 最低生活費は、家賃・光熱水費など、生活にどうしても必要な費用を指します。

 最低生活費は、どの地域に住んでいるか、世帯の人数など、その世帯によって異なりますので、申請時に計算し、世帯収入がその額を下回っているときに受給の対象となります。

 生活保護を申請して認められると、その世帯が生活していけるだけのお金が支給されるようになります。

生活保護を受けていても働くことは出来る


 生活保護を受けたお陰で、生活に余裕が出来、働くことも考えられるようになったとします。

 女性なら、「水商売の方が高いお給料を貰えるし、出来そうかも?」と考えたとしても、おかしくありません。

 生活保護を受けていると、働いてはいけないようなイメージがありますが、そんなことはありません。事実はその逆です。

 生活保護とは、あくまで「一時的に困難な状況を助ける」ための措置であって、いずれは経済的に自立し、生活を立て直してもらうのを目的とするものです。

 ですので、アルバイトやパートからでも、仕事を始めるのはむしろ推奨されているのです。

 生活保護費は、不足を補うためのものなので、最低生活費から世帯収入を差し引いた金額が支給されます。

 例えば、最低生活費が15万円、収入がゼロなら、
○最低生活費15万円-収入0円=15万円:支給額
 となります。

 働き始めて、月に5万円の収入を得たとしましょう。上の図式にあてはめるなら、
○最低生活費15万円-収入5万円=10万円:支給額
 となり、生活保護費が10万円に減額される、となりそうですよね。

 しかし、実際はこうなりません。これだと、働いても働かなくても手元に残るお金は同額ということになり、働くモチベーションが上がらないからです。

 そのため、生活保護には「控除」という制度があります。働いたことへのご褒美のようなものです。

 5万円なら、18,400円が控除となります。すると、
○最低生活費15万円-(収入5万円-控除18,400円)=118,400円
 となり、控除分の余裕が出来るわけです。

 このように、徐々に収入を増やしていき、いずれ最低背活費を上回る収入を得られるようになると、晴れて支給は終了、という流れになります。

 頑張れば頑張った分、収入を増やすことも出来る水商売は、女性にとっては生活保護から抜け出すためのよい手段と言えそうです。

 ここで重要なことは、収入を正直に申告することです。働きながら自立を目指す姿勢は、きっとケースワーカーからも応援してもらえることでしょう。

生活保護を受給しながら水商売→×


 生活保護費を貰いながら、水商売で高額の月給も稼ぐ、いわゆる「二重取り」をもくろむ人も中にはいますが、これは出来ません。

 どこかに勤めて収入を得た場合、それを隠しておくのは難しいでしょう。勤め先がきちんと税金を申告していたら、従業員の誰がいくら貰ったのか、税務署にも分かるようになっているからです。

 水商売のお店ではお給料を手渡しするところも多いため、「バレないのでは?」と考える人もいるようですが、まともなお店なら、税金関係もきっちり報告しているはずです。

 税金関係をうやむやにしている店なら、当面はばれずに働けるかもしれません。が、それは犯罪です。見つかれば逮捕→立件されて裁判へ、と一直線です。

 では、生活保護費を不正受給した場合どうなるか、詳しく見てみましょう。

水商売の生活保護費不正受給への罰則


 生活保護の不正受給が露見すると、厳しい罰則が待っています。

①利子をつけて返還

 不正に受給した生活保護費は、当然返さなければなりません。

 生活保護法では、以下のように規定されています。

第78条:不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に100分の40を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。

 つまり、上限40%の利子をつけて返還しなければならない、とされています。

 100万円を不正に受け取ったなら、140万円を返さなければなりません。

 ただしこれは、不正受給の中でも、「悪質ではない」と見なされた場合の措置です。仕事を始めたけれども忙しく、つい申告を後回しにしてしまったとか、指摘を受けて素直に認め、返済の意思を見せれば、「悪質ではない」と見なされるかもしれません。

 しかし、高額の月収を得ながら生活保護費を受け取っていたことがバレた場合には、「悪質」と見なされ、さらに重い処罰を課される可能性が高くなります。

②罰金刑又は懲役刑

 悪質な不正受給には、生活保護法の第85法違反が適用されます。

第85条:不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治40年法律第45号)に正条があるときは、刑法による。

 意図的に所得を隠していた=嘘の申請をしたと認められれば、3年以下の懲役刑か、100万円以下の罰金刑を科されます。

 つまり、40%の利子をつけて返済した上、さらに100万円以下の罰金か、もしくは懲役刑という重い罰が待っているわけです。

 さらに、所得隠しとなれば、税務署も黙っていません。所得税法違反で、本来の税金に加え、追徴課税がなされます。

 つまり、嘘をついて得た生活保護費は全額返還した上、利子と、罰金と、正直に申告していれば払わなくてよかった税金も上乗せされるのです。

 結局は大損することになります。

③詐欺罪

 生活保護費の不正受給に、生活保護法の違反だけでなく、刑法が適用されると、「詐欺罪」として逮捕されることになります。
 詐欺罪で有罪となれば、10年以下の懲役刑となります。

 と書くと簡単なようですが、実際逮捕されるのは、想像以上に苛酷な体験です。

 まず、逮捕されると警察へ連行され、取り調べを受けます。留置場か拘置所に入れられ、外へ出ることは出来ません。

 逮捕により拘束されるのは72時間ですが、拘留延長が認められれば、最長で20日間もの間、外に出ることは出来なくなります。家族との連絡も自由に取れません。

 拘留期間中に起訴されてしまうと、釈放されるか、保釈が認められない限り、裁判が終了するまで出られません。

 生活保護の不正受給で詐欺罪として起訴された場合、初犯であれば、1~3年程度の求刑が一般的なようです。3年以下の懲役なら、執行猶予がつくケースがほとんどです。

 しかし、懲役刑を免れたとしても、起訴されて有罪判決を受けた以上、「前科」はつくことになります。

 一度ついた前科は、消す方法がありません。

詐欺罪で告訴されたキャバ嬢


 実際、生活保護費の不正受給で逮捕されたキャバ嬢がいます。

 2013年2月、大阪府警はある女性を詐欺容疑で逮捕しました。彼女は北新地の高級クラブやキャバクラで多額の収入を得ていたにも関わらず、その収入を申告せず、生活保護費を受給していたというものです。

 10か月で460万円の収入があったということなので、ひと月平均46万円は稼いでいたことになります。生活保護費は必要ないどころか、一般的なサラリーマンよりも稼いでいますね。

 売れっ子で、週末にはお客さんとゴルフに行き、周囲にもそれと分かるような派手な生活をしていたようです。

 この場合、地元に「不正受給調査専任チーム」という組織があったことが、発覚→逮捕へと繋がったようです。

「再三の呼び出しに応じなかったので、自宅をチェックした。張り込みを続け、後をつけてみると、自宅の他に他人の名義で家を借りていることが分かった」とのこと。

 さらに捜査を続け、多額の収入があることが発覚し、逮捕という結果になりました。

 その後の経過は報道されていませんので、判決等を知ることは出来ませんが、相応の罰を受けたと予測出来ます。

 また、この事件は全国ニュースで実名で報道されました。一度ニュースになってしまうと、その後ネットなどから逮捕の情報を完全に消去することは事実上不可能です。

 恐らく本人が予想していた以上に、重い社会的制裁を受ける結末になったのではないでしょうか。

不正受給への目は厳しさを増している


 私たちの税金から賄われる生活保護費を不正に受給することは、決してあってはならないことです。

 しかし、残念ながら、不正に受給する人が後を絶たないのが現状です。

 厚生労働省の発表によると、2015年度の不正受給数が4万3938件となり、過去最多を更新しました。金額は4億8495万円減って、169億9408万円でした。
 
 私たちが納める税金は、国にとっても予算を支える重要な収入です。ところが、生活保護費の不正受給がこれだけ多いということは、納税者の不公平感を募らせることになります。また、本当にやむを得ない事情で生活保護費を受給している人に対しても、当たりが厳しくなったり、時にはいじめの対象になったりと、よくない影響が出てしまいます。

 そうした状況をただすため、生活保護費の不正受給に対しては、取り締まりが強化されつつあります。

 上に記した不正受給の金額が減ったのは、収入の調査が徹底され、早期に発見されるケースが増えたことによるものとされています。

 生活保護費の不正受給は、受給者本人の虚偽申告だけではありません。「生活保護ビジネス」と呼ばれ、暴力団などの不正・脱税の手段となっているケースもあります。その場合、被害額が何億にも上る場合もあります。

 そのため、各自治体も生活保護の受給状況に関しては細かくチェックし、不正を許さない体勢を強化していく方針です。

まとめ:ルールを守ってきちんと働こう


 生活保護は、本当に困った人を助けるための最後の砦です。不正を働く不心得な受給者のせいで、生活困窮者が申請を受け付けてもらえなかったり、支給額を減額されてしまったり、というケースも実際に存在します。

 所得をごまかして働こうなどと考えず、ルールを守って正しく利用しましょう。