マイナンバー制度が始まる前、キャバ嬢やホステスなど水商売の女性にとっては、「ダブルワークが会社にばれる!」「税金が高くなる」などなど、様々な噂が飛び交いました。施行されてしばらく経ちますが、予想したほどの変化を感じていない人も多いのではないでしょうか?
しかし、新しく導入された制度は、徐々に世の中に浸透していくものです。働いているお店で突然「マイナンバーを提出して」と言われることもあるかもしれません。
そのときになって慌てないよう、マイナンバー制度についてもう一度おさらいしておきましょう。
マイナンバー制度って?
「マイナンバー」という言葉自体は、導入に当たってかなり色々と取り沙汰されたので、まったく聞いたことがないという人はごく少数でしょう。 しかし、「マイナンバーって何のためのもの?」という質問によどみなく答えられる人も、それほど多くはないのではないでしょうか。 実はよく知らないという方のために、マイナンバー制度についてご紹介しましょう。
①国民生活が便利になる
マイナンバーとは、住民票を持つすべての国民に与えられた12桁の番号を指します。2016年1月の導入に当たって、「マイナンバーのお知らせ」があなたの家にも届けられたはずです。 マイナンバー制度を導入した理由には、「国民生活の利便性が向上する」ことがまず挙げられます。 これまでは、税金や保険の手続きをする際には、役所や税務署などの公的機関に足を運び、自分の情報を書類に書き込んで提出する必要がありました。違う部署に行けば、同じ情報をまた一から書き直さなければならなかったり、長時間待たされたりして、時間がかかってウンザリしたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 マイナンバーがあると、その番号を元にあなたの個人情報を照会するのが簡単になります。書類を提出しなくても、手続きが済んでしまうケースが増えます。 役所関係の手続きは、何かと負担を強いられる印象が強いですが、マイナンバーの導入により、負担がかなり軽減され、便利になっています。
②行政の効率化
上に記したように、手続きが簡素化されるので、ひとつの手続きに携わる人数や時間も節約出来るということになります。 スピードがアップするメリットはもちろん、人件費もかなり浮くことになります。 公的機関で働く人たちの給料は、当然私たち国民の税金で賄われています。 こうした経費節減は、国政の正常な運営のためにも欠かせません。
③公平・公正な社会の実現
国民一人一人の個人情報を照会しやすくなったということは、どれくらいの所得を得ているかといった情報を国が確認しやすくなったということです。 これにより、税金の徴収がしやすくなるというメリットが発生します。また、生活保護などの社会保障費の不正受給を防ぐことも目的とされています。 つまり、所得を誤魔化しにくくして、本当に必要な人へ公的な支援が行き渡るようにしたいという狙いもあるのです。
マイナンバー制度がもたらすメリット&デメリット
マイナンバー制度は、国民一人一人に個別の番号を与えることによって、情報を照会しやすくし、手続きを簡略化することが出来るものです。マイナンバー制度の導入によって、税金が高くなったとか、個人がデメリットをこうむることはないと言っていいでしょう。 しかし、マイナンバー導入に当たり、「水商売には不利!」という声が高かったことをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。 マイナンバー制度があると、水商売をやっている人がこうむるデメリットとは何なのでしょうか?
①所得のごまかしがきかなくなる
キャバ嬢やホステスの仕事は、何らかの事情でお金が必要な人が、副業としてやっているケースも多いですよね。 会社員だと、副業禁止の会社に隠れて水商売の仕事を続けている人も珍しくありません。 本来、どんな人も所得に応じて税金が課されます。そのため、税務署が個人の所得を正しく把握するために、確定申告をするよう義務付けています。 ところが、水商売の仕事をしている人で、年度末に確定申告をする人は、まだまだ少数派です。ほとんどいないと断言する人もいます。 実は、マイナンバー制度の導入は、こうした「不透明な所得」をなくし、誰がどれだけの所得を得ているかをハッキリさせて、税金を徴収しやすくすることも目的とされています。 水商売のお店でも、働いているキャバ嬢やホステスに支払っている給与額や源泉徴収について、税務署に報告する義務があります。 ちゃんとしたお店では、給与明細を出し、源泉徴収もしてくれます。 そこから、あなた個人が得た収入の金額が正確に分かるので、税務署はその額を元に住民税を算出します。 本業として働いている会社に、その住民税の通知が行くので、金額から副業をしていることが発覚するケースが多いのです。
②バレないで済むケースは?
大手の店ほど、公的機関への手続きもきちんと行っているところが多いですが、本来提出すべき支払調書を出していない店もたくさんあります。 そういう店では、年末調整や源泉徴収をしてくれない代わりに、給与は現金手渡しで、マイナンバーの提出も求められないかもしれません。 この場合は、年度末に確定申告をしない限り、税務署にバレる可能性は低くなります。 副業をしていても、会社に露見することもないかもしれません。 しかし、今後こういったお店への締め付けが厳しくなることは十分に考えられます。ある日突然マイナンバーの提出が必要になるかもしれません。 収入は申告しなければならないということは、心得ておく必要があります。
マイナンバー制度のもとで水商売の人が気をつけるべき点
マイナンバー制度の重要な点は「税金」にあるということはお分かりいただけたと思います。 働いて稼いだお金を国に持って行かれるようで、決してよいイメージがない「税金」ですが、「納税」は国民の三大義務の一つにも挙げられており、避けて通ることは出来ません。 日本中どこでも舗装された道路を利用することが出来るのも、公立の病院や学校の恩恵を受けることが出来るのも、国民の税金あってのサービスなのです。
①キャバ嬢は「個人事業主」
キャバ嬢やホステスは、ほとんどが「個人事業主」として扱われます。お店は場所を提供し、お客さんへサービスしてくれる女性を「外注」として雇っている、という形です。 会社の顧客であれば、顧客の個人情報は会社が管理しますが、キャバ嬢の場合、指名客の情報はキャバ嬢が把握しており、お店側は関知しません。同伴やアフターといったサービスも、ノルマとして課しているお店もありますが、営業時間外のサービスなので、キャバ嬢の個人営業ということになります。そこでお客さんに奢ってもらったり、プレゼントを貰ったりしても、お店に報告したり提出したりする義務はありません。 つまり、お店側に雇われているというよりは、「業務委託」を受けて働いている、という雇用形態になるわけです。 水商売で働いている限りは、「個人事業主」として、自分の所得を申告する義務があるのです。
②年度末に確定申告が必要
個人事業主は、年度末に確定申告を行う必要があります。キャバ嬢に限らず、フリーランスで働いている人や自営業の人も、皆しなければなりません。 2月の中旬から3月の中旬までが確定申告出来る期間です。 きちんと確定申告をして、所得を透明にしておけば、マイナンバー制度が出来たからと言って、デメリットをこうむることは何もありません。
③住民税は「自分で納付」に○をつける
ところで、マイナンバー制度が導入されれば、副業は必ず会社にバレるのか?と言えば、実はそんなことはありません。 確定申告の書類には、住民税をどうやって納めるか、方法を自分で選択出来る欄があります。 「給与から差し引き」か「自分で納付」かの二択です。 ここで、「自分で納付」に○をつければ、住民税の納付書は自宅に送られてくるので、会社にバレることはありません。
水商売の人が確定申告をするメリット・デメリット
本来確定申告をしなければならないのに、しない人が非常に多い水商売の世界。 もしかすると、「正直に収入を申告することで税金が増える」「せっかくしんどい思いをして働いた給料を国に持って行かれる」といったイメージを持っていませんか? 確定申告は、公平に税金を徴収するための制度ですが、きちんと申告した方が、得られるメリットも大きいのです。 今まで確定申告をしたことがなかったという人は、これを機会に、考え直してみてもいいかもしれません。
①お金が返ってくるかも
確定申告をする一番のメリットは、何といっても「お金が返ってくる」ことです。 キャバ嬢やホステスの給与からは、お店が「源泉徴収」として所得税が差し引かれています。この金額が必要分より多い場合、確定申告をすることで返ってきます。 2~3万円が毎月源泉徴収として引かれていた人の場合、1年分で2~30万円前後が返ってきて、ちょっとしたお小遣いになった、というケースもあるようです。
②住民税・保険料などが安くなる
日本では、「累進課税制度」といって、収入の多い人ほど高い税金を課す制度になっています。 ですので、収入が低ければ、税金や保険料の金額も下がります。 キャバ嬢やホステスのお仕事で、高い報酬を得ている場合、「たくさん稼いでいるから税金もがっぽり取られるのでは…」と心配する人も少なくありません。 でも、水商売の仕事は、収入も多い代わり、出ていくお金も多いですよね。 仕事のために使ったお金は「経費」として申請すれば、その分を差し引いた金額が実収入とされます。 キャバ嬢・ホステスが経費として申請出来るのは、 ○衣装代 ○メイク・ヘアメイクなどの美容費 ○送迎費 ○お客さんへのプレゼント・飲食代 ○携帯電話代 などなどです。仕事のために必要なものは、すべて必要経費として申請出来ます。 ただし、携帯電話代は、プライベートでも使うものなので、「按分」(あんぶん)と言って、おおよその割合で計算する必要があります。 かかった費用は、面倒でもその都度領収書を貰い、取っておくクセをつけましょう。 給与として店から受け取った金額から、必要経費を差し引いた分が、あなたの所得となります。 その所得額に応じて、国民保険料や住民税の額が算出されます。 年収が1000万円を超えるような売れっ子キャバ嬢は別として、一般的な収入のキャバ嬢なら、確定申告をした方が得られるメリットは大きいかもしれません。
③扶養からは外れる
親の扶養に入っている人は、年間の所得が103万円以上になると、扶養から外れます。 経費申請で所得の額を103万円以内に収められれば、扶養に入ったままにしておくことは出来ますが、頑張って稼いでいるキャバ嬢・ホステスとなると、なかなかその金額は難しいでしょう。
④確定申告をしないとどうなるか?
「納税」は国民の義務ですので、しかるべき税金を納めていないとなると、「申告漏れ」悪質な場合は「脱税」と見なされます。 所得をごまかしていることがバレると、高額の追徴課税をくらうことになります。 ごく一般的なキャバ嬢・ホステスの場合、国税局や税務署が個人に目をつける可能性は低いので、確定申告をしなくても、バレないケースがほとんどです。 しかし、副業で稼ぐ人が増えた今、税務署も色々な方面に目を光らせています。コスプレアイドルとして週末だけ活動していた人が、どこからか副業収入が税務署に知られ、追徴課税されたケースもありました。 確率が低いとは言え、絶対にバレない保証はありません。 年収が何千万という売れっ子の場合は、もっと気をつけなければなりません。税務署は、怪しいと睨んだ店に調査に入ることがあります。その時、「売上の高いキャバ嬢を10名教えてください」などと、キャストにも調査の手が及ぶことがあります。 そこでもし、確定申告をしていないことがバレると、追徴課税が漏れなくついてきます。高額所得者となると、収入の4割が税金として持って行かれるので、申告していない人も増えますが、高額所得者の税金逃れには、税務署も目を光らせています。 心穏やかに働こうと思ったら、きちんと確定申告をしておく方がいいでしょう。
まとめ:きちんと申告して堂々と稼ごう
いかがでしたか? マイナンバーが導入されたからと言って、水商売の仕事にすぐ影響が及ぶことはありません。ただ、「所得をごまかしにくくなる」のは確かなようです。 きちんと所得を申告しておけば、マイナンバーによってマイナスの影響を受けることはまずないと言っていいでしょう。 「納税」という国民の義務を果たして、堂々と稼いでください。